七月七日は七夕の節句。星祭りだ。
年間五回のお節供も、
一月七日の人日の節句、
三月三日の上巳の節句、
五月五日の端午の節句に続き、
七夕は早くも四回目。
どのお節供も、季節と深く密着している。
新暦だと少し季節感が早すぎるので、
できれば旧暦の日付に合わせた方がぴったりくる。
とりわけ七夕は、新暦だとほぼ梅雨の真っ最中。
雨雲に覆われて、星空を臨めないことも多い。
これでは織女と牽牛が会えないではないか。
年によれば、せっかく雲がなくても月が明るすぎて
星が見えない可能性だってある。
旧暦の七日なら、月齢は七日夜と決まっているのでその心配もない。
旧暦の七月七日は、ほとんど立秋後。
そんなわけで、実は七夕は秋の季語だ。
けれど、いまは一般的に夏の七月七日が七夕さま。
こうなったら、梅雨空に果敢に挑む笹飾りを立ち上げよう。
七月にはいると、花屋さんには笹飾り用の笹が店先に出る。
これを見るともうそわそわ。
「ああ、もうすぐ七夕さまだ」。
一時期、近所の仕事仲間と七夕には笹飾りをして祝っていた。
笹を調達する係だったので、その年もお花屋さんで一本いい笹を選んでもらって担いで帰宅する途中。
その晩に七夕の会に集う友人の一人と遭遇した。彼女がのたまうには、
「大きな枝担いでる、不思議な人が歩いてくると思った」
そう言うが君、これは今宵わたしたちがお祝いする会に使う重要物件ではないか。
お能に出てくる女人ではないのだから。
七夕の宴は、乾杯をしたあといよいよメインイベント、
短冊に願いをしたためる。
願いごとは「一人ひとつ」の厳しいルール。
みな真剣に短冊を握りしめて、秘密の願い事を書いたものだった。
きな笹の枝は、ほのかに部屋で香っていた。
今年は久しぶりに、笹飾りをしてまたあの香りを楽しみたい。
が、よく知ると、笹飾りは六日の夜にはもう軒に出して、
七日の夜には川や海へ流しにいったそうだ。
七日の夜に願い事を書いているようでは、遅すぎたということか ?
あれからちっとも願い事が叶っていないのは、そのせいかもしれない。
絵・文 : 平野恵理子
1961年、静岡県生まれ、横浜育ち。イラストレーター、エッセイスト。
山歩きや旅、暮らしについてのイラストとエッセイの作品を多数発表。